夜と遊ぶ



「お、久しぶり。
とりあえず、入れよ」


まだ少し早いかな?と思ったけど、昌也の自宅を訪ねると、
昌也はもう帰宅していた。


チャイムを押すと、扉を開けて、そう部屋に入るように促された。



「あまり時間ないよね?」


私はどこか懐かしい気持ちで、昌也の部屋へと上がり込む。


付き合っていた頃のように、自然と部屋に座り込む事も出来ず、
クローゼットから衣服を取り出している昌也を、立ったまま眺めている。


一夜の事件のせいだけではないだろうけど、疲れが顔に出ている。


ちゃんと、ご飯とか栄養あるもの食べているのだろうか?


今の私には、それは訊けないけど。


「まあ、とりあえず、着替えとか取りに来た。
うちの署に帳場が立って、暫くは泊まり込みだから」


「忙しい時に、ごめんね」


「加賀見の事が聞きたいんだろ?」


それに、頷いた。


「本当、真湖は勝手だよな?
けど、それを分かっててこうやってお前に会ったのは、加賀見が殺されてお前がどんな顔してるか、見たかったからだよ」


そう、鼻で笑われ。


思わず、睨み付けてしまうけど。


すぐに、その力が抜ける。


昌也と争いに来たわけじゃない。



「今回の事件、S県警の奴らが中心になって捜査を進めて行くから、捜査の進捗状況は、俺らは少し遅れて耳に入って来るけど」



「本当に、殺されていたのは、一夜なの?」


そう訊いた私に、え?と昌也は言うが、その顔は、何を言ってるんだ?と思ってそう。



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