夜と遊ぶ
私はゆっくりと、一枝さんの方へと近付いて行く。


向こうも私に気付き、力なく笑う。


「真湖ちゃん?
ほんの少し見ないうちに、大人っぽくなったね?」


それがお世辞なのかなんなのかは分からないが、服装の好みは、学生の頃とは少し変わった。


きっと、そうやって少しでも大人になった姿を、一夜に会ったら見て欲しかった。



「一枝さんも、ニュースを見てですか?」


もしかしたら、この人には誰かが連絡したのかもしれないけど。


「俺、いっちゃんが撃たれる時、いっちゃんと電話で話していたんだ」

その言葉に、え、とこの人の顔を見た。


本当に、一夜は撃たれたの?と、この人に訊いてしまいたい。

未だに私は一夜の死を受け入れられない。


「電話越しに大きな銃声が聞こえたから、俺も、すぐ110番したんだよね。
けっこう、何件も通報があったみたいだね?」


「そうですね」


今朝のニュースでも言っていた。

通報が相次いだ、と。


「だから、俺は今さっき迄、警察署で話聞かれてて。
やっと解放して貰えたけど、また後日呼ばれるだろうな。
今日はその帰りに、この場所に立ち寄ったんだけどね」


この人は、目撃者みたいなものなのか。

一夜が撃たれる瞬間を、知っている。



「真湖ちゃんは、今日はどうして?」


そのどうして?は、一夜と別れた私が、何故この場所に来たのかという意味だろうか?


まだ、私と一夜は関係があるのか?と。


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