夜と遊ぶ
「一夜は本当に死んだの?
いまだに私、信じられなくて…」
そう訊くと、どう答えるか迷ったように、中は一度口を閉ざしたけど。
「加賀見一夜は、死んだ。
俺はこの目で見た」
そう言われて、やっと、本当にそうなんだって思えた。
諦めとは違うけど、私の心の中にある微かな望みが消えた。
「けっこう派手に葬式したんだけど。
棺はずっと閉じられたままで、俺を含めた身内以外、兄ちゃんのその姿は見てないんだけど。
棺に入れる前、ほら?体を洗って貰うんだけど。
そん時に、兄ちゃんの背中が見えたけど、獅子の刺青は綺麗なままだった」
「そう」
一夜の背にあった、金色の獅子を思い出す。
「あ、この眼鏡、兄ちゃんが掛けてたやつなんだけど、
俺より、お前が持ってろよ?」
中は掛けているその赤い眼鏡を、外した。
眼鏡を外すと、やはり一夜とは目が似てないな、と思った。
「俺、ちょっと視力悪いから、これ、レンズ変えてしまって、悪いけど」
赤い眼鏡と、私の顔を交互に見ている。
「その眼鏡は、いいや。
なんとなく、そのまま中が掛けてて欲しい」
そう、一夜が望んでいるような気がした。
「けど」
「私、一夜に貰ったこのボールペンがあるから、いいよ」
私は鞄から、それを取り出す。
クリスマスに一夜に貰った、MONTBLANCの朱色のボールペンは、今も大切にいつも持ち歩いている。
「そのボールペン、ちょっと貸せ」
中はそう言うと、眼鏡を左手に持ち変えて、私からそのボールペンを取る。
まだ、貸すとか言ってないのに、と思っていると。
眼鏡を持ってる左手で器用に私の手の平を掴んだ。
えっ?何?
中は、私の掴んだその右手の甲に、住所らしきものを書き込んで行く。
そして、最後に書かれた、霊園の名前。
「此所に兄ちゃん居るから。
今日が49日だけど、納骨は葬式の日に済ませてて」
「そうなんだ」
一夜の眠る、お墓。
「兄ちゃんの母親と、同じ墓に入ってる」
一夜の母親も、亡くなっている。
一夜はお母さんの事が大好きだったから、なんだか、良かったようなそんな気持ちになる。
一人じゃないんだって。
いまだに私、信じられなくて…」
そう訊くと、どう答えるか迷ったように、中は一度口を閉ざしたけど。
「加賀見一夜は、死んだ。
俺はこの目で見た」
そう言われて、やっと、本当にそうなんだって思えた。
諦めとは違うけど、私の心の中にある微かな望みが消えた。
「けっこう派手に葬式したんだけど。
棺はずっと閉じられたままで、俺を含めた身内以外、兄ちゃんのその姿は見てないんだけど。
棺に入れる前、ほら?体を洗って貰うんだけど。
そん時に、兄ちゃんの背中が見えたけど、獅子の刺青は綺麗なままだった」
「そう」
一夜の背にあった、金色の獅子を思い出す。
「あ、この眼鏡、兄ちゃんが掛けてたやつなんだけど、
俺より、お前が持ってろよ?」
中は掛けているその赤い眼鏡を、外した。
眼鏡を外すと、やはり一夜とは目が似てないな、と思った。
「俺、ちょっと視力悪いから、これ、レンズ変えてしまって、悪いけど」
赤い眼鏡と、私の顔を交互に見ている。
「その眼鏡は、いいや。
なんとなく、そのまま中が掛けてて欲しい」
そう、一夜が望んでいるような気がした。
「けど」
「私、一夜に貰ったこのボールペンがあるから、いいよ」
私は鞄から、それを取り出す。
クリスマスに一夜に貰った、MONTBLANCの朱色のボールペンは、今も大切にいつも持ち歩いている。
「そのボールペン、ちょっと貸せ」
中はそう言うと、眼鏡を左手に持ち変えて、私からそのボールペンを取る。
まだ、貸すとか言ってないのに、と思っていると。
眼鏡を持ってる左手で器用に私の手の平を掴んだ。
えっ?何?
中は、私の掴んだその右手の甲に、住所らしきものを書き込んで行く。
そして、最後に書かれた、霊園の名前。
「此所に兄ちゃん居るから。
今日が49日だけど、納骨は葬式の日に済ませてて」
「そうなんだ」
一夜の眠る、お墓。
「兄ちゃんの母親と、同じ墓に入ってる」
一夜の母親も、亡くなっている。
一夜はお母さんの事が大好きだったから、なんだか、良かったようなそんな気持ちになる。
一人じゃないんだって。