夜と遊ぶ
「俺も保守的になったのかな。
俺、もう一人弟が居るんだけどね」


そういえば、一枝さんは三人兄弟だと一夜が言っていたな。


「その弟は、俺とは違い、本当に堅気で。
だから、その弟に迷惑掛けずにこれからはクリーンに生きて行こうかなって。
悟って」


一枝さんは、更正したって事なのかな?


「だから、ごめんね。
真湖ちゃん、あれ程俺の事を逮捕してやるって、息巻いていたのに」


べつに、それほど息巻いてないけど。

「それなら、それでいいです」

「ん?」


「きっと、それで。
そうじゃなきゃ、一夜が一枝さんを見逃した事が報われない」


一枝さんがこの先、変わってくれるのならば。

私はあえて、この人が犯罪者であって欲しいとは思わない。


「いっちゃん、そこまで計算してたのかな?」


「計算?」


「いっちゃん、わりと先の先迄読む事が昔から得意だったから。
今の俺の姿を、見越してたのかな?
加賀見一夜は、けっこう策士なんだよね」


一夜は、確かにそんな所はあるかもしれない。

完全に、手の内も見せてくれない。

一枝さんはなんとなく、暗殺の事も一夜の手の内を分かった上で、動いたような気がするけど、

私は一夜にとったら、完全に盤上の駒だったのかもしれない…。


ふと、思ったけど。



もし、一夜が何の計算もなく、私と純粋に誕生日をやり直すつもりで、それを普通に一枝さんに伝えていたら…。



私も一緒に、殺し屋に銃で撃たれていたのだろうか?


流石に、それを一枝さんに訊くのは、怖い……。


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