夜と遊ぶ



「真湖ちゃん、大好きだよ」


二人で、今日も一夜のベッドでゴロゴロとしている。


もう、3日くらい私は一夜の部屋に泊まっていて、こんな感じ。


1日の大半を、二人でこうやってベッドで過ごす。


「私も、大好き」


そう、子供のように一夜に甘える。



「本当に、真湖ちゃんは可愛いからな」


寝転んだまま、私をぎゅうと一夜は抱き締めてくれる。


一夜は私よりも一回り年上だからか、
こうやって甘えさせてくれるのが上手い。


「思ってたんだけど、一夜はずっと、私の事、ちゃん付けだよね?
"真湖"って呼ばないよね?」


「真湖って、呼ばれたいの?」


「ちょっと」

本当は、ちょっとじゃなく、凄く呼ばれてみたい。


「真湖、大好きだよ」


柔らかくそう言われて、かなりキュンとしてしまった。


けど。


「やっぱり、真湖ちゃんって呼んでくれる方が、一夜らしくていいや」


なんか、違和感。


「え、何それ?」


そう言いながらも、一夜自身も違和感があったのか、笑っている。

「じゃあ、次は、好きよりも、"愛してる"って言ってよ?」


そういえば、一夜に一度も愛してると言われた事がない事を思い出した。


「え?愛してる?」


「そう」


そう言うと、一夜は照れてるのか、困った表情を浮かべている。


「愛してる、とか凄い照れるし。
実際、愛してるとか言うの、違和感あるって」


一夜って、けっこう大胆なようで、
凄く恥ずかしがり屋な所がある。


恥ずかしいのを、そうやって大胆な振りして、誤魔化しているんだろうな、って、気付いているけど。



まあ、けど、愛してるなんて、私も女友達に、冗談でしか言った事ないけども。


「私、一夜に愛してるって言われたいなぁ」


そう、故意に上目遣いで一夜を見る。


自分でも、ちょっとあざといと思う。



「えー、真湖ちゃんにそんなに可愛くお願いされたら、俺言うしかないじゃん」

一夜は、ちょっと待って、と、一度息を吐くと、


「真湖ちゃん、愛してるよ」


そう、うっとりとするような声でそれを口にした。


だけど。


「んー、なんか一夜には、愛してるよりも、好きとか大好きって言われる方が、嬉しいかもしれない」


心が、いつもみたいにドキドキとしない。


「えー、何それ?
じゃあ、俺もう二度と真湖ちゃんに愛してるとか言わない」


そう、ちょっと拗ねたような顔をしていて。


「俺、真湖ちゃんには、もう好きしか言わない。
真湖ちゃん、好きだよ」


この人、たまらなく好きだな、って思った。


だから、一夜は私に愛してるは言わない。


そして、終わりのある私達に、永遠なんて言葉は使わない。

< 187 / 215 >

この作品をシェア

pagetop