夜と遊ぶ
早瀬さんのお店は、小さな四階建ての雑居ビルの一階で。
二階が店内からも繋がっていて、そこは早瀬さんの居住スペースになっている。


キスに飽きた頃、早瀬さんに誘われ二階へと行く。
広いワンルームの部屋の隅にあるベッドに、私は早瀬さんに押し倒された。


「本当に加賀見会長は真湖さんの事が好きでしたよ」


そう言って、早瀬さんは私の服を脱がせて行く。


照明が落とされた真っ暗な部屋で、先程つけた階段の方からの明かりだけしかない。
早瀬さんがどんな顔をしているのか、うっすらとしか見えないけど。
声がほんの少し震えていて、泣くのを堪えているのだと分かる。


なんとなく、早瀬さんが私を抱きたくなった気持ちも分かって来た。
私の中に、一夜の面影を探している。


私もそうなのだろう。
加賀見一夜をよく知っているこの人に抱かれる事で、ほんの少しだけど一夜に触れられたように心が満たされる。


「加賀見会長はどうでした?
もっと激しかったですか?」


裸で抱き合い私の体を貫きながら早瀬さんは、耳元でそう言う。


「一夜は…」


激しくはなかったな、と思う。


私と一夜は体の相性が良かったのか、本当に気持ち良くて。
多分、一夜よりも早瀬さんの方が、セックスは上手いのだろうな、と思う。


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