夜と遊ぶ



朝、目が覚めると、なんて事をしてしまったのかと後悔した。
隣の早瀬さんを見ると、私と同じような顔をしていて。
それで、二人して笑ってしまった。


「俺、加賀見会長に憧れてたのかもしれません」


「そうですか」


だから、一夜の元恋人の私に興味を持った。


「真湖さんも知ってるように、加賀見会長って普段はあんな感じで軽い人なんですけど。
俺も何回もあの人に振り回されてキレて。
でも、あの人のマジの時はやっぱり大きな組織のトップなんだな、と思わされるオーラがあって。
俺、途中から復讐とかじゃなく、ただ加賀見会長に付いて行きたいって思ってた」


早瀬さんは、腕の中の私をぎゅっと強く抱き締める。
この人も私と同じように一夜を失い、不安定なんだな。



「そういえば、早瀬さんの背中、綺麗ですね?」


綺麗って言い方はおかしいかな?


「加賀見会長に言われてました。
絶対に彫るなって」


早瀬さんは体を起こし、私に背を向ける。
その背中には、刺青等の類いはない。


「一夜がそう言ったんだ」


それは、いつか早瀬さんにはヤクザの世界から抜けて欲しいという、一夜の思いなのだろう。


「後、俺は組を持つなって。
俺、加賀見会長の秘書ですが、聖王会で一応幹部だったんですよ。
周りはそれを違う方向に穿ったように見てましたけど。
俺が力を持ち、主人を裏切らないように、そう抑え込まれているって…」


きっと、早瀬さんが足を洗う時に、組を持っていると後々面倒だと一夜は考えたのだろう。
周りは、それを違う風に見てたのだろうけど。


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