夜と遊ぶ
「加賀見会長は、もう後戻りしないように背中に墨を入れたのでしょうね」


一夜の背中には、金色の獅子の刺青があった。
二度と堅気には戻らない覚悟で入れたのだろう。
それは、聖王会に対して復讐をやりとげる為に。


いつか、一夜が俺はヤクザのまま死ぬと言っていたが、そういう事だったのだろう。


「刺青って出世する度に彫って行くものなのですが、加賀見会長は夏はTシャツ着たいから、肩とかには絶対に入れないって言ってましたね。
服からはみ出すのはダサいとか、そんなこだわりで」


そういえば、一夜の刺青は背中の中心にあるだけだった。
言われてみると、ヤクザの刺青って、肩や腕やお尻の方迄あるのかも…。


「加賀見会長は、そういう人なんですよ」


その言葉に、一夜を思い出す。
もう会えないけど、こうやって早瀬さんと一夜の話をするだけで、ほんの少し一夜に会えたように心の隙間が埋められる。


今の私の周りには、一夜の事を話せる人が居ないから。

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