夜と遊ぶ




「いっちゃん、今の真湖ちゃん見てどう思ってるんだろう」


行為の後、他の男の人の時と変わらないように、私は一枝さんに腕枕をされている。
先程迄は冷たいと感じたこの人の肌が、今は温かく感じる。


私の熱が下がって来たのか?
変な話、セックスの後から少し体調が戻って来たような感じがする。
ちょっと、汗をかいたからかな。


「一夜が、今の私をどう思ってるか?」


一枝さんに言われ、考えてみる。


「呆れてるかも。
私がこんな軽い女だったなんて」


一夜の身近な男性もそうだけど、好きでもない男と付き合って寝て。


「いっちゃん、こんなはずじゃなかった、って思ってるだろうね」


「え?」

今一つ、一枝さんの言ってる意味が分からない。



「まさか、真湖ちゃんがこんなにもいっちゃんを好きなのだと本人は思ってなかったと思うよ。
正直俺も、真湖ちゃんがこんなにもずっといっちゃんを引きずっているなんて思ってなかった」


「なにそれ」


なんかよく分からないけど、勝手に私の気持ちを決めつけられていて、嫌な感じ。


「いっちゃん、きっと真湖ちゃんはすぐに自分の事なんて忘れて、他の男と幸せになるんだろな、って思ってて。
それを望んでただろうな」


「だから、勝手に決めないで!」


一夜じゃないけど、一枝さんにそう怒鳴ってしまう。


「なんかね、俺は、いっちゃんに弟を殺されて。
今もいっちゃんが憎くて。
いっちゃんの大切な真湖ちゃんをこうやって抱いたら、ちょっとはその憎しみが晴れるかな?って思ったけど…」


「思ったけど、なんですか?」


「真湖ちゃん抱いてる時、いっちゃんは本当にこの子の事を好きで、こうやって大切に抱いてたのかな?とか色々思って。
憎いはずなのに…」


この人も修司のように、私に一夜の面影を見てしまったのか。


「大好きな親友を憎まないといけないのも、苦しいですね?」


ずっと、一夜を死に追いやったこの人を憎んでいたけど。
一夜がこの人にした事の方が、ずっと酷い。


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