夜と遊ぶ

「そうやって、竜道会との争いの火種になりそうな奴は、
さっさと消してしまえ。
放っておいても、あちらがそのうちジュニアを消すだろうけど。
ただ、そうなると、うちもメンツがあるから、竜道会にジュニア殺られて、黙ってられなくなる。
さっきも言ったように、それで大きな抗争になって。
そうなると、こちらの方がまだ分が悪いから」


「だから、永倉を…」



「そう。
もし高崎がジュニアを殺ったのが公になっても、ジュニアを殺る大義名分はそうやってあるから、トップの俺が許せば済む。
高崎、殺れよ?」


「けど、どうして、加賀見会長は永倉を?」


高崎さんがそう訊くと、隣の一夜の纏う空気が一段冷ややかになったような気がする。



「永倉の父親はうちのナンバー2だが、
父親の方は、昔程の猛々しさもなく、もう終わった男。
だけどジュニアの方は、まあ、頭が切れるわけじゃないが武闘派で、うちの最高顧問辺りがジュニアのシンパだろ?
頭の切れる永倉の長男がそうやって弟のジュニアを後押しするように、組に金を垂れ流していて。
このままだと、いつかうちは二つに割れる。
俺とジュニアとで」


「けど、永倉はトップになりたいとか、下剋上とか、そうやって野心家じゃないですよ」


「ジュニア自身がどうとかじゃなく、
周りがアイツを神輿として担ぎ上げんだろ?
現に、ジュニアをうちの直参の組長にって声も一部ではある。
そうしたら、実の父親と息子が兄弟とか、ウケんだろ。
それに、永倉の長男が裏で糸引いて、自分の弟を聖王会の会長にしてやろうって、思ってんだろうな」


「内輪で抗争なんかしたら、それこそ他所からの笑いものだな」


ずっと二人のやり取りを聞いていた、鈴城組長が口を開く。


鈴城組長も、一夜と同じ意見なのだろう。



「ジュニアには、汚れ仕事もして貰って重宝していたから、もったいないんだけどな」


「あのサツの事ですか?」


高崎さんの、そのサツって言葉に、反応してしまう。


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