夜と遊ぶ

「高崎の兄貴は、優しい兄貴だったけど。
今も鈴城会長に殴られた左耳は、少し聞こえにくい」


そう一夜は、懐かしそうに笑っている。


「永倉を殺るなら、俺が殺ります」


高崎さんは、そうハッキリと口にした。



「高崎さんとジュニアは、今も犬猿の仲。
あなたが適任だと思っています」


一夜の言葉に、そうなのか、と思う。


永倉ジュニアとこの高崎さんは仲が悪い。


「だから、加賀見会長。
もう昔の事は忘れて下さい」


そう困ったような、高崎さん。


昔の高崎さんと一夜の関係は分からないけど、
現在は、一夜は聖王会のトップで。


そんな相手から、敬うように話されたら、高崎さんも困るのだろう。



「高崎、その時が来たら頼む」


「はい」


そう、二人の間で重く言葉が交わされる。



「そういう事だから、真湖ちゃん。
今聞いた事は、警察官の彼氏には言わないでね?」


一夜の言葉に、
高崎さんと鈴城組長。


近くに立っている、早瀬さんも私に鋭い目を向ける。

きっと、一夜の警察官の彼氏って言葉に、警戒している。



「俺も、女を殺りたくないから」


人差し指で切るように、一夜は私の首を撫でる。


怖くて、涙が浮かんで来る。



「加賀見会長、その子はあなたのなんなのですか?」


そう、高崎さんが問いかけて来る。



「可愛がってる女かな?
まぁ、心配しなくても、真湖ちゃんは誰かにこの場での話を漏らすような事はしないから」


そう言って、一夜の人差し指が私の首から離れた。


高崎さんも鈴城組長も、その後はずっと訝しいような目で私を見ていた。


その後も、一夜には私のお皿に沢山焼けた肉を入れられ、その度に口に運ぶけど。


殆ど、味が分からなかった。
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