夜と遊ぶ
◇
S町の駅近くのビルにある、大きなボーリング場へと連れて来られた。
聖王会の会長ってやはり凄いのか、
ボーリング場のワンフロアを貸し切り。
早瀬さんや護衛の二人は、エレベーターや非常階段に近い辺りに立って、他の人がこのフロアに立ち入らないようにしている。
「真湖ちゃん、勝負しない?」
一夜は、15ポンドの青い玉を軽々手に乗せている。
「嫌。
だって、一夜は勝てる勝負しかしないんでしょ?」
"ーー真湖ちゃん、ごめんね。
俺は勝てる勝負しかしないんだよねーー"
初めて会った夜に、そう言っていた。
「えー、ハンデあげるよ?」
「200くれるなら、いいよ」
「それは、無理」
私は、ボーリングなんて本当に久しぶりで、
自慢じゃないが、50点以上出した事がない。
一夜はスーツの上着を隣のレーンの椅子に投げると、
ワイシャツを腕まくりしている。
そして、1投目を投げるが、初っぱなからの、ストライク。
「よし!
真湖ちゃん見た?俺のカッコいい所」
一夜はそうはしゃいでいて、その姿に、少し笑みが漏れた。
私もよし、と、ボーリングの球を持ち、
投げる。
球はレーンの右端に流れ、1本だけ倒し、消えた。
「ハハ、真湖ちゃん、上手」
そう笑われ、顔が赤くなる。
そして、意気込んで投げた2投目は、すぐにガーターに。
「真湖ちゃん、勝負はしてないからって。
もっと本気出していいんだよ?」
そうからかわれて、さらに腹が立つ。