夜と遊ぶ




S町の駅近くのビルにある、大きなボーリング場へと連れて来られた。


聖王会の会長ってやはり凄いのか、
ボーリング場のワンフロアを貸し切り。


早瀬さんや護衛の二人は、エレベーターや非常階段に近い辺りに立って、他の人がこのフロアに立ち入らないようにしている。


「真湖ちゃん、勝負しない?」


一夜は、15ポンドの青い玉を軽々手に乗せている。


「嫌。
だって、一夜は勝てる勝負しかしないんでしょ?」


"ーー真湖ちゃん、ごめんね。
俺は勝てる勝負しかしないんだよねーー"


初めて会った夜に、そう言っていた。


「えー、ハンデあげるよ?」


「200くれるなら、いいよ」


「それは、無理」


私は、ボーリングなんて本当に久しぶりで、
自慢じゃないが、50点以上出した事がない。


一夜はスーツの上着を隣のレーンの椅子に投げると、
ワイシャツを腕まくりしている。


そして、1投目を投げるが、初っぱなからの、ストライク。



「よし!
真湖ちゃん見た?俺のカッコいい所」


一夜はそうはしゃいでいて、その姿に、少し笑みが漏れた。


私もよし、と、ボーリングの球を持ち、
投げる。


球はレーンの右端に流れ、1本だけ倒し、消えた。



「ハハ、真湖ちゃん、上手」


そう笑われ、顔が赤くなる。


そして、意気込んで投げた2投目は、すぐにガーターに。


「真湖ちゃん、勝負はしてないからって。
もっと本気出していいんだよ?」


そうからかわれて、さらに腹が立つ。

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