夜と遊ぶ
「じゃあ、こうしよう?
私が一回でもストライク出したら、
一夜は何でも私の言う事聞いて?」
「あれ?まだ父親を俺の力で探して欲しいとか、言ってんの?」
今夜、一夜に会いに来たのは。
その目的があるから。
そりゃあ、一夜に惹かれて会いたい気持ちがないわけではなかったけど。
けど、目的がなければ、こんな風にヤクザなんかと関わろうとは思わない。
一夜なら、きっと私の父親を見つけられるような気がする。
「一夜、お願い。
私のお父さん、誰かに拐われたりしたのかもしれない。
一夜なら、そういう悪い人達の知り合いも多いだろうし、何か分かるんじゃないかな?」
「誰かに拐われたって。
なんで、おっさんなんか拐うんだよ?
若い女ならともかく。
真湖ちゃんの父親は、ただの家出じゃないの?
蒸発ってやつ?」
蒸発…。
それは、その可能性がないとは思わないけど。
うちの両親の関係は、昔から冷めきっているし。
両親の関係だけじゃなく、
私達家族の関係も冷めきっているかもしれない。
私は一人っ子だけど、それも周りの親戚に言われて仕方なく作った子供だと、
昔、両親が話しているのを聞いてしまった。
母親は昔も今も、バリバリのキャリアウーマンで。
本当は子供なんて欲しくなかったと、
父親と夜中に喧嘩していたのを、
私がまだ幼い時に、聞いてしまった。
それなりには、母親は私の事を可愛がってくれているし、愛情も感じるけど…。
父親も昔から、家庭よりも仕事って感じの人で。
仕事、仕事、仕事で。
朝も夜も、休みも返上して、仕事で。
その仕事が突然嫌になって、居なくなったとしても、
腑に落ちるといえば腑に落ちる。
「じゃあ、お父さんの事はもういいや」
もし、ただの家出ならば。
そうやって見付けてしまったら、
お父さんが可哀想かもしれない。