夜と遊ぶ
結局、5ゲームしても、私は一度もストライクは出ず。
ただ、一度だけ、スペアが取れて、それだけで大喜びしてしまった。
一夜はなんだかんだ、5ゲームとも200点は超えていて、
絶好調って感じだった。
認めたくないけど、凄くカッコ良かった。
「真湖ちゃん、俺が勝ったから、ご褒美にチューして」
そう言って、一夜は目を閉じ私の前に立つ。
私は片付ける為に持っていたボーリングの球を、
一夜の唇に付けた。
「…真湖ちゃん、酷いな」
そう、笑っている。
「だって、勝負してないもん。
私、負けると思う勝負はしないから」
スコアは散々だったけど、ボーリングは楽しかった。
ストレス発散になったかもしれない。
ほんの少し、昌也に浮気されている事を忘れられた。
お金の精算は、早瀬さんがしてくれたのか、
私と一夜はそのままビルから出る。
「この後、どうする?
ホテル行く?」
一夜は腕時計を見ると、私に視線を向けた。
「ホテル、行ってもいいよ」
そう言うと、クスリ、と一夜は笑う。
「今夜はアイツらも引き連れてるから、
このまま真湖ちゃんの事車で送って行く」
一夜はそう言って、私の手を握る。
「女に恥かかせて。最低」
一夜は、その気がないのだろう。
冗談でそうやって言って来ただけで。
「今日はちょっとボーリング頑張り過ぎちゃって。
流石に、こんな右手じゃ真湖ちゃんの事満足させてあげられないから」
笑って、自分の右手を見ている。
冗談だと分かっているけど、
その意味が分かると、顔が赤くなってしまう。
「じゃあ、帰ろっか?」
それに、うん、と頷いた。