夜と遊ぶ
「ラブラブの二人はなんで付き合ってないの?」


ナガやんは、そう首を傾げている。


「この子、真湖ちゃんっていうんだけど。
真湖ちゃん、彼氏居るんだよね」


「え?じゃあ、いっちゃん遊ばれてるの?」


「そうなるのかな?」


え?そうなるの?


「いっちゃんヤクザとかやってるけど、いい奴だよ?」


ナガやんは、お願いするような目で私を見て来る。



「真湖ちゃん、浮気性の彼氏と、意地でも別れないんだよね」


「真湖ちゃんの彼氏は、浮気してるの?」


「そう。しかも、真湖ちゃんの誕生日に浮気するわ、
けど、その浮気相手が生理でヤレなくて、次の日にヤル為だけに真湖ちゃんの事を部屋に呼ぶ、最低なクソみたいな奴」


そこまで言わなくても、と思うけど。


客観的に聞いていたら、本当に最低なクソみたいな男で。


何故、私もそんな男と別れないのか、と思ってはしまう。


「そのクソみたいな男は、一体何者なの?」


「そのクソみたいな男は、それがウケんだけど、警察官」


一夜がそう言うと、一夜だけじゃなく、ナガやんもケラケラと笑い転げている。


なんなの、この人達?


ひとしきり笑うと、二人は体を起こして、私に目を向けた。



「ナガやんは、俺の昔からの大親友」


そう、一夜から紹介される。


大親友…。


「で、ナガやんはこのマンションの一階に住んでるの」


それで、あの電話を切ってから、すぐにこの人が来たのか。


同じ建物なら、すぐだろう。


「えっと、綾瀬真湖です。
ナガやんさんとお呼びすればいいですか?」


「いや。ナガやんなんて俺を呼ぶのいっちゃんくらい。
一枝(ひとえ)でいいよ」


それは暗に、ナガやんと呼ばれたくないんだな。



「一枝さんは、一夜と本当に仲良しなんですね?」


こんな楽しそうな顔するんだ、って、今の一夜を見ていて思う。



「いっちゃんとは歳が同じなのもそうだけど、中学から大学迄同じ学校なんだよね。
エスカレーター式の私立校なんだけど、
中学と高校迄はずっとクラスも同じで」


一枝さん、一夜と同じ歳なんだ。


一夜も若く見えるけど、この人はさらに若く見える。


< 51 / 215 >

この作品をシェア

pagetop