夜と遊ぶ
◇
「「カンパーイ」」
私はカシスミルク、一夜はビールで乾杯する。
あの後、タクシーに乗りS町駅の歓楽街から少し外れた、お洒落な居酒屋に、一夜とやって来た。
テーブルには、温野菜のサラダ、カナッペ、オイルサーモンとシソのパスタ。
骨なしのフライドチキン、ローストビーフ。
おでんの盛り合わせが並ぶ。
一夜が適当に、注文してくれた。
「この店、表向きにはそうじゃないけど。
うちの傘下の組の店なんだよ。
だから、俺なら何食べてもタダだから、遠慮しないで」
そう言われ、薄暗いこのお洒落な雰囲気の居酒屋は、ヤクザの経営なのか?と、
周りのテーブルのカップル達を見て思う。
みんな、ここがそういう店だなんて、知らないのだろうな。
「なんだか、一夜には色々して貰ってばかりだよね?」
「そう?」
初めのあのバースデーケーキ、
焼肉…は、鈴城さんがご馳走してくれたのだっけ?
ボーリング代に、今のこの食事。
「本当に私、体で返すしかないよね?」
「真湖ちゃん、大胆」
アハハ、と笑っているけど。
「だって、申し訳ないから…」
この先も、一夜と会えば、こうして私にこの人は色々としてくれるだろう。
「じゃあ真湖ちゃんは、俺が飯食べさせてあげたからお礼にヤラせてくれるの?」
そう言われると。
「そういうわけでは、ないけど」
「ないけど?」
「うん…。なんか、よく分かんない」
カシスミルクのグラスに、口を付ける。
まだあまり飲んでないけど、もう私は酔っているのかな?
なんだか、一夜に触れたい。
「俺の事好きだからって、素直に言えばいいのに?」
それに、お酒が喉の変な場所に入り、思わず噎せてしまう。
「俺も、ヤリたいだけで真湖ちゃんにこうやって、ご飯食べさせてるわけじゃないけど」
「じゃあ、なんで?」
「それは今じゃなくて、後でベッドで、耳元で囁いてあげる」
その言葉に、さらに酔いが回ったように、顔が赤くなり熱を持つ。