夜と遊ぶ
その後は、甘い空気を変えるように、
一夜は最近ハマっている、オンラインの将棋の対戦ゲームの話を始めた。
「一夜は、勝てない勝負はしないんだよね?」
「実は、けっこう負けてる」
「なに、それ?」
そう笑うと、一夜も笑っている。
一夜は夜も、わりと自分のマンションの部屋に居る事が多くて、
そうやって暇を持て余しているらしい。
あの一夜の住むマンションの部屋は、聖王会の本部なのだけど、
事務所は他所にもあり、
時々、一夜もそちらに出向くけど、
大体は、オンラインでの連絡や報告で事足りるそうだ。
「最近は、ネッフリで海外ドラマ観てばっか。
映画も気になるのがあったら観るかな?
あ、じゃあ、この後、映画でも観に行こうか?
とりあえずシネコンに行って、タイミング良く上映時間になる、映画観ない?」
「いいけど。
それが、子供向けのアニメとかだっても?」
「そう。だっても」
一夜の提案に、映画を映画館で観るなんて、いつぶりだろうか?と、楽しくなる。
昌也と、何年か前に観たのが最後。
なんだか、それで昌也の事を思い出した。
昌也という彼氏が居るのに、
他の男の人とこうやってデートしていて。
体の関係はまだないけど、これは浮気だな、と思った。
心の、浮気。