夜と遊ぶ
私はお酒が弱い自覚があるし、
この前の泥酔もあるので、今日は一杯しか飲んでないのに。


店の外に出ると、けっこう足元がフラフラとした。


「真湖ちゃん、また酔っちゃったの?
一杯しか飲んでなかったけど。
凄くお酒弱いの?」


私を支えようとしてくれている一夜の腕に、
しがみつく。

本当にフラフラとするけど、
ただ甘えたくて。


「んー、けっこう酔っちゃった」


酔っているのか、楽しくて仕方ない。



「真湖ちゃん、本当に可愛いな」


「ありがとう」


うふふ、と笑うと、一夜も頬を緩める。



「でも、これだけ酔ってたら、映画観ながら寝ちゃうんじゃない?」


「うん。寝ちゃうかも」


「じゃあ、ホテル行こうか?
ホテルで映画観ればいいか」


「うん」


一夜の腕にしがみついたまま、
S町の歓楽街の方へと歩いて行く。


交差点の信号が赤で、足を止めると。


道路を挟んだ向こうに、昌也と知らない女性が歩いているのが目に入った。


それに、サーと酔いが醒めて、
一夜の腕から手を離した。



「真湖ちゃん?」


一夜は、そんな私の異変に気付いた。


信号は青になるが、私に合わせて一夜もまた歩き出さない。



まだ気付いてないのか、
昌也はその女性と楽しそうにこちらへと歩いて来る。

だけど、前を見た昌也の視線が私を捕らえた。


「……えっ」

その目が大きく見開かれている。

先に気付いた私よりも、驚いている。



「昌也君、どうしたの?」


そう訊いているその子は、あのLINEの"ami"ちゃんだろうか?


「あれあれ?
もしかして、これって修羅場…」


一夜だけが、今のこの状況を楽しんでいる。


この辺りは、昌也の住むマンションから近くて、
こうやって鉢合わせてもおかしくはなかった。

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