夜と遊ぶ
「加賀見、お前真湖に近付いて何のつもりだ?」


「何のつもりも何も…。
そりゃあ、真湖ちゃんに対して下心だらけだけど」


「お前!」


昌也は一夜の胸ぐらを掴もうとしたが、その手を寸前で止めた。


警察官だという立場的に、相手がヤクザだとしても暴力的な事をしてはいけないと、寸前で思い留まったのか。


「なんか、酔い覚めちゃったなぁ。
ねぇ、真湖ちゃん」


「真湖、帰るぞ?」


昌也は一夜を睨み付け、私の方へと歩いて来ると、私の腕を掴む。


それが痛くて、昌也が怒っているのが分かる。


それは、浮気した事なのか、聖王会会長の加賀見一夜と一緒に居るからか?



「…離して」


私はその昌也の手を、振り払おうとする。



でも、力が強くて、離してくれない。



「真湖ちゃん嫌がっているから、離してあげて?」


一夜は、私の腕を掴む昌也の手首を掴む。



昌也は、それに痛みからか顔を歪めている。



「加賀見、お前には関係ない。
俺と真湖の問題だから!」



「別れる…」


私がそう言うと、昌也は恐る恐る私に目を向けて来る。



「昌也なんかとは別れる!」

「別れるって、急になんだよ」


急になんかじゃない。

この人と居て、ずっと私は傷付いていた。

「…私、知ってるんだから!
私の誕生日に、私との約束断って、他の女の子を部屋に連れ込んでいたの…」


「真湖…」


昌也はもう言い訳はせず、それを認めるように私から手を離した。

その手が、力なく下に垂れている。

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