夜と遊ぶ

「もう1つだけ、教えてあげる」


その一夜の言葉に、何?と首を傾げる。


「真湖ちゃんを拾ったあの日。
その少し前に、女と歩いている本堂を見掛けた」


「そう…」


この人に拾われた場所は、昌也の住む場所の近くだから、それは不思議じゃないな。


じゃあ、一夜は私の彼氏が本堂昌也だと知り、
その時点で、私が浮気されている事を知っていたのか。



"――真湖ちゃんが可哀想だからハッキリと言ってあげるけど。
彼、本当に仕事?――"


「こないだ本堂巡査と一緒に居た女、
さっきの女とは違った」


「うん…」


やはり、昌也の浮気相手は複数人居るのか。



「でも、さっきの本堂のあの感じ、本命はちゃんと真湖ちゃんなんだろうね?
彼イケメンだし、女の方から寄って来るんだろうね」


「もう昌也の事はいいよ。
なんだか、昌也と寄り戻せって言われてるみたいで、嫌」


一夜には、あんな男と別れて良かった、と言って欲しい。



「寄り戻せ、とは思わない。
あんな男と真湖ちゃんは別れて良かったと、思うよ」



思っていた言葉を言って貰えたけど、なんか違う。

一夜には、昌也が最低だからとかではなく、
ただ、私が彼氏と別れて良かったと、思って欲しいのだろう。


「私、一夜が好きなの」


耐えきれず、そう口にした。

なんだか、言葉にしないと胸が苦しくて。


「こんな話の流れで言われても、いまいち響かないな」


そう、笑って交わされる。


「…一夜は、私の事をなんとも思ってないなら、変にその気にさせないでよ」


私に可愛いと言ったり、キスしたり触れて来たりするのに。

一夜は私の肩を抱く力を強め、私を引き寄せると向かい合うように抱き締めて来る。

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