夜と遊ぶ
「ねぇ、それより真湖ちゃん、お腹空かない?」
「え?お腹?」
この話の流れで、唐突にそう訊かれ。
えっと、と困って返事が出来ない。
「何か食べに行こう?」
そう言って、一夜は私の手を掴み立ち上がる。
「二人だけではないよね?」
「うん。護衛は何人か来るけど、知り合いの店だから、
中には俺達だけで入れるから」
一夜はそう言って、スマホで誰かに電話を掛けている。
多分、早瀬さんかな?
あの店行くから、車回してとか、そんな内容。
◇
そのままマンションの部屋から出て、建物の外へと行くと、
既に、早瀬さんが来ていて、護衛の人達も居る。
いつものように、早瀬さんの運転する車の後部席に私と一夜が乗る。
護衛の人達が乗るミニバンは、この車を挟むように2台走っている。
「あの店で良かったですか?」
そう訊く早瀬さんに、
「うん。幸子(さちこ)さんの所。久しぶりに、あそこの角煮食べたくて」
一夜はそう答える。
ヤクザのこの人の知り合いの店って聞いて、どんなお店だろう?と思ったけど。
わりと、普通のお店みたい。
ただ、幸子という女性の名前が気になるけど。