夜と遊ぶ




「わぁ、可愛いお嬢さん!
加賀見会長とお似合い」


その女性は、私と一夜を見て嬉しそうにそう声を上げた。


年齢は50代後半くらいで、年齢的にもそうだけど、その雰囲気的に一夜と男女の仲ではなさそう。


それに、安心するのもそうだけど、嫉妬深い自分が恥ずかしくなる。


「でしょ?
幸子さん、こちら、綾瀬真湖ちゃん」


「綾瀬…真湖ちゃん…」


幸子さんは、先程よりも私の顔をジッと見ていた。


その、何かに気付いたような表情。


「覚えてました?
一夜ごめん!
私、前にこのお店に一度、昌也と来た事あって」


このお店は、S町の歓楽街から外れた所にある、小さな小料理屋。


幸子さん一人でやっているお店みたいで、カウンター席しかなく。


昌也と来た時は、特別私達は幸子さんに話し掛けたりはなかったけど、注文やお会計で、それなりに幸子さんとは顔を合わせた。


「本堂が住んでるのこの辺りだもんね。
元彼と連れて来る店が被るくらい、あるある。
俺、そんな事を気にする程、器小さくないから」


一夜はそう笑いながら、これからはこの辺りで真湖ちゃんとデートするのは辞めとこうかな、と言っている。


ちょっと気にしている?



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