夜と遊ぶ
「俺、今日真湖に会ったらこんな事を言うつもりじゃなかったし、真湖の事をこうやってホテルに連れ込む気もなかった」
「本当は、昌也は私に何を言いたかったの?」
そう訊くと、昌也は気まずそうに、うつむいた。
「…別れた後、もう二度と俺に関わらないでくれって。
俺ら、共通の知り合いも多いし、色々面倒だなって」
え、と思い、黙って昌也の顔を見ていた。
「だって、加賀見なんかと関わりのある女と、関わったら。
俺、マズイだろ?
それを、職場の人間に知られたら」
この人は警察官で、しかも、組対。
確かに、昌也がそれを心配するのは分かる。
「…もう、昌也とは関わらないし。
それに、昌也と共通の知り合いとも、私は関わらないから、安心して」
そう言うと、昌也は小さく頷いた。
昌也はさっさと衣服を整えると、
部屋のテーブルに1万円札を置いた。
「ここ駅から近いから、送らなくて大丈夫だろ?
どうせ、この後加賀見に会いに行くんだろ?」
私がそれに答えないままでいると、
構わず、昌也は言葉を続けた。
「…昔、お前が俺に警察官になったら?って言ったくせに…。
なのに、今はヤクザの女になってるって。
なんだよ、それ…」
昌也はそれ以上何も言わずホテルの部屋から出て行った。
私と昌也が付き合い始めた高校生の頃、
確かに、私は昌也にそう言った。
昌也は覚えてないと、思っていたのに…。
昌也がよく私に仕事の話をしていたのも、もしかしたら、昔、私がそう言ったからなのだろうか…。