復讐日記【自滅編】
底辺
 Dは怠け者だ。子どもの頃から楽なことしかしなかった。友達と仲良くする努力、親の手伝い、勉強、そして大人になってからは働くことさえ面倒臭く、仕事はおざなりにこなし、何も覚えず、ただクビにならない程度に過ごし、毎月の給料を貰えれば良かった。流石にただただ楽をして金を手にすることが出来る仕事というのは無く、やはり何度もクビになった。
 手っ取り早く夜の仕事に就こうとしたが、さほど見た目が良いわけでも弁が立つわけでもないので、裏方の仕事しか回って来なかった。ただ、周りには金回りの良い女が多く居た。テキトーにおべっかをつかって纏わりついて、小遣い稼ぎをしていた。
 1人、店で稼ぎ頭の女をみつけた。その女を利用して楽出来ないかと、試しにぞっこんなフリをしてみた。気のいい女は大事にするフリをするとどんどん金を出してくれた。家も車も手に出来た。結婚するのは気が引けたが、飽きたら離婚すれば良いと思って籍を入れた。
 女には数千万の預貯金があった。毎日湯水のように金が遣えた。仕事を探すフリをして毎日ギャンブルに明け暮れた。
 そんなDに呆れた女が離婚を切り出した。家も車の女の名義だ。相変わらず仕事はしてないし、貯金など無いDは抵抗した。
 心を入れ替えると誓うフリをした。女は一旦離婚を取り下げたが、働き口をみつけなければDを追い出す、と言った。仕方なくまた水商売に戻った。
 新しい女を探すか。乗り換えたら離婚すれば良い。
 新しい女はすぐにみつかった。女ってちょろいな。ちょっと優しくすればすぐに落ちる。店の女に手を出すのはご法度だが、水商売の女は金がある。罰金もすぐ払ってもらえた。当然女もDもクビになった。女はすぐに別の店に雇われた。バレずに離婚も成立した。
 新しい女の部屋に転がり込み、籍を入れることに成功した。また暫く金を貰ってギャンブル三昧だ。
 女って奴は働かない男を養いたくない生き物なのかな。専業主婦は働かないで旦那に養ってもらってるだろうが。
 またまた離婚を切り出された。くそっ、めんどくせーな。
「俺を捨てないでくれ、頼む。お前に捨てられたら俺は生きて行けない!」
 働いていないのだから生きて行けないのは当たり前だ。だが女は弁護士を立て、慰謝料まで請求して来た。働かない、夜の生活がおろそかになった、家のこともしない、女房の金を湯水のように遣う…Dに勝ち目は無かった。
 だが、この先住む場所も無ければ生活費も無いのだ。
「お前に捨てられたら俺は死ぬしかない! ここから飛び降りて死ぬ!」
 と脅してみた。女は一言、
「死ねるもんなら死んでみろ。そんな勇気なんか無いくせに」
 と言った。ここは3階だ。うまくすれば死なないかもしれない。肢体不自由として生き残ったとしたら、それはそれで楽なんじゃないか。女に一生面倒を見てもらえる。思い切って飛び降りてみた。

 Dは息絶えた。バカな男だ。
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