気だるげ男子の無自覚な独占欲



「あんたの体温が布団の中で伝わって来て」

「……うん」

「気づいたらああなってた」


 つまり、私と寝るのが心地よくて、無意識に抱き締めてたってことで。


「……そうなんだぁ」


 恥ずかしさでぼやっとした相槌しか返せなくなる私。


 トクトクと速まる鼓動と、顔に熱が集まっていく感覚。


 鏡を見なくてもわかる。私の顔、絶対ゆでだこになってるよ……。


「あんた、抱き心地最高」


 いつもよりはっきりで明るい声は、その言葉が本心だと示していて。


 だからこそ、胸に感じていたほのかな甘みは一瞬で苦みに変わった。


「えっと、悪口言われてる?」

「なにがどうなってそういう解釈になるの」

「太ってるって言いたいのかと思って……違うの?」

「全然違う」


 私がぷにぷにマシュマロボディで抱き心地がいいって話をしているのかと思ったけれど、機嫌悪そうに重く響いた声を聞くとそうじゃないみたい。


 私を抱き枕にするのをやめた湯本くんが、見えないはずなのに的確に私の頬を片手でぐにょっと潰すから、私は今度こそたこさんになった。



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