気だるげ男子の無自覚な独占欲
怒ってる……?
太陽が落ち着きを取り戻し、いつの間にか辺りが涼やかな空気に佇むようになった頃。
「もう一人の委員は浅川さんがいいな」
クラスで一番人気がある男の子、佐原光輝くんが放った言葉で、瞬時に教室の中の時が止まった。
私の思考も止まった。
えっと……佐原くんは今、私の名前を出した?どうして?
“クラスマッチ実行委員”の文字が書かれた黒板の前に立つ佐原くんは、爽やかな笑顔をこちらに向けている。
進学校であるこの学校は、準備に膨大な時間も手間も要する体育祭を、開催しない方針らしい。
だけど、生徒からのクレームが多数寄せられたため、簡単なクラスマッチをするようにしたそう。
9月末に行われるクラスマッチに向けて実行委員決めを行っていて、あとは佐原くん立候補後にやる気を見せ始めたたくさんの女の子たちの中から選出するだけ、だったはずなんだけど……。