気だるげ男子の無自覚な独占欲
「一緒にやってくれる?」
佐原くんは周りの硬直なんて見えないみたいに、私だけを見ている。
そんな中の問いかけ。つまり、さっきの佐原くんの希望は私の聞き間違いってわけじゃなさそうで。
再び時が進み始めてから感じている、女の子たちから発せられた不穏な空気。つまり、これは絶対的に断らなきゃいけないものなわけで。
「浅川だったら最後まで真面目に務めてくれるだろうし、適任だな。浅川、やってくれるか?」
先生が私の名前を発したことで、クラス中の注目を浴びることになった。
お、おかしいな……。熱くもないの背中がうっすらと汗ばんできた気がする……。
「で、でも、立候補者がたくさんいるので……」
目立つのが苦手な私は、痛いほどの視線が気になって口ごもる。
きっぱりと断ることもできないくせに、言い訳がましいのが情けない。
先生もそんな私の態度に苛立ったのか、はたまた、二つ返事で引き受けると思っていたのに頷かなかったのが気に食わなかったのか。
つかつかと大股で私の席の前にやってきて、難しそうに腕を組んだ。
まだ20代後半だろうに、向けられた視線に重みを感じる。
近づかれた分だけ離れたくなるほどの圧があって、怖い……。