気だるげ男子の無自覚な独占欲



「浅川は部活に入っていないし、バイトもやってなくて時間あるだろ?」

「……はい」

「やってくれるよな?」

「…………はい」


 嫌なことを嫌だと主張できない小心者の私。


 ここまで強く頼まれて、断れるわけがなかった。


 ……たとえ、多くの女の子たちから嫌われようとも。


 もうとっくの前に嫌われてるから、いまさらだけどね……。


「出た、いい子ぶりっこ。先生の頼みを聞いて点数稼ぎってこと?」

「あたしたちが先に立候補してたのに、横取りとか最悪……」

「光輝と少しでも長くいられると思ったんだけど、どっかの誰かさんに奪われたわ~」


 ちくちくちくちく。


 無数の針で全身をつつかれてるみたいに聞こえてくる小さな声。


 上機嫌で教卓の方へと戻っていった先生には届いていない、生徒だけに聞こえる声。


 『女子ってこえーな』とか『どっちも打算的すぎんだろ~』とか。


 他人事な空気感が、余計に私を孤独にさせる。


 断れなかった自分が悪いのに“私を助けてほしい”なんて。


「浅川さん、こっちにおいで」


 (わざわい)の中心から自然に抜け出せるようにと、手招きしてくれた佐原くんの救いに“そうじゃない”だなんて。


「……ごめんなさい」


 いつものように、別世界へ遊びに行ってる湯本くんを見つめる私は、いつもよりずっとわがままな生き物だ。



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