気だるげ男子の無自覚な独占欲



 病人どころか怪我人も滅多に来ないこの場所は、先生が会議で不在しがちなおかげで2人きりが基本。


 今日も例に漏れずにそうで、今日もベッドに入った瞬間におやすみタイムかと思ったのだけど……。


「怒ってはない。なんかむかむかする」

「それを世間一般的には怒ってるって言うんだよ……」


 ご機嫌斜めな湯本くんは珍しく起きたまま、こちらを見下ろしている。


 人ひとり分空いてるかどうか、みたいな距離感に息がつまりそう。


 抱き締められて感じるドキドキとはまた違った心臓の跳ね方。


 心臓に優しく触れられて、それからじわじわと力を込められていくような、そんな高鳴り。


 湯本くんは苛立っているみたいだし、ドキドキなんてしてる場合じゃないのにな……。


「あんたが他の男と並んでるの見ると、イライラしてくる」

「え?」


 低く吐くように放たれた言葉に、私は面食らった。


 並んでる……?


 私が親しくしているのは湯本くんくらいだし、たまに教室で話しかけられることはあっても並んで話すほど仲がいい男の子はいない。


 最近は誰にも話しかけられた記憶がないし……湯本くんは何のことを言っているんだろう?



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