気だるげ男子の無自覚な独占欲



 誤解を解こうと精一杯頑張ってみるけれど、不機嫌な湯本くんには全く効果がないらしく。


 降ってくる視線はいつも以上にくっきりとしていて、湯本くんが湯本くんじゃないみたい。


 ……いろんな意味でお手上げ。


 視線だけでも逃げようと、湯本くんから顔を背けたけど……。


「どこ見てんの」


 縫い留められていた両手を、頭の上でまとめられたかと思えば片手で拘束され、空いた右手で顔を正面へと戻された。


 あまりにも鮮やか過ぎる手つきと目が合う恥ずかしさで、どっと心拍数が上昇する。


 ……逃がしてくれないなんて、湯本くんは無自覚にいじわるだ。


 これ以上逃げようとしても仕方ないと、射抜くような視線を降参して受け止めていると。


「あいつと目が合ったときは笑ってたくせに」

「えっ……」

「俺のときは素っ気ないの、なんで?」


 そう言いながら、ぐっと。声と手に力がこもったのがわかった。


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