気だるげ男子の無自覚な独占欲



 答えるまで離さないと言わんばかりの拘束。


 覗き込んでくる瞳はほんの少しの怒りが滲み、息をするのも躊躇うほどに近くて。


 『なんで?』なんて聞かれても、そもそも私が佐原くんに笑いかけたことだって覚えていない。


 だから、態度の違いなんて、理由を聞かれても答えられない。


 ……でも、ただ一つ、はっきりとわかっていることはあって。


 湯本くんとなかなか目を合わせられないのは。


 湯本くんといると逃げ出したくなるのは。


「……緊張しちゃう、から」


 目が合うくらいで緊張するなんて……変な人って思われるかもしれないけど。


 だけど、湯本くんよりも佐原くんとの方が仲がいいって、勘違いされたくないから。


「ドキドキして苦しくなっちゃうから、反射的に逸らしちゃうの。……ごめんね」


 消え入りそうな声でなんとか答えて、今度こそ逃げるようにぎゅっと目を瞑った。


< 23 / 51 >

この作品をシェア

pagetop