気だるげ男子の無自覚な独占欲
『せんせー。俺いま超眠いから、保健室に行ってもいい?』
あのときだって、いつの間にか口出ししてた。
そもそも、授業中に起きることの方が珍しい。
でも、保健室で聞いた、あの柔らかな声が耳に飛び込んできたとき、自分でも信じられないほどにあっさりと目が開いて。
後ろから見た彼女は、抱き締めていたときよりももっと小さいように思えたから。
『あぁ、これこそがサボりだよな』
自分の一番大事な睡眠を捨てて、思わず衝動のままに動いてた。
彼女を守りたい、だなんて生まれて初めての感情を抱いた。
今だってそうで。
「かわいいな」
「……え?」
これまでに感じたことのない、知識としてだけ持っていた情。
ついには湧いたままに、口から零れ出た。
彼女のぱちっと開いた目に、俺が映っている。
まっすぐに見つめられている。
それだけで気持ちが満たされて、さっきまで心にまとわりついていた燻りが綺麗に消え去った。