気だるげ男子の無自覚な独占欲



『せんせー。俺いま超眠いから、保健室に行ってもいい?』


 あのときだって、いつの間にか口出ししてた。


 そもそも、授業中に起きることの方が珍しい。


 でも、保健室で聞いた、あの柔らかな声が耳に飛び込んできたとき、自分でも信じられないほどにあっさりと目が開いて。


 後ろから見た彼女は、抱き締めていたときよりももっと小さいように思えたから。


『あぁ、これこそがサボりだよな』


 自分の一番大事な睡眠を捨てて、思わず衝動のままに動いてた。


 彼女を守りたい、だなんて生まれて初めての感情を抱いた。


 今だってそうで。


「かわいいな」

「……え?」


 これまでに感じたことのない、知識としてだけ持っていた情。


 ついには湧いたままに、口から零れ出た。


 彼女のぱちっと開いた目に、俺が映っている。


 まっすぐに見つめられている。


 それだけで気持ちが満たされて、さっきまで心にまとわりついていた(くすぶ)りが綺麗に消え去った。



< 25 / 51 >

この作品をシェア

pagetop