気だるげ男子の無自覚な独占欲
◇ ◇ ◇
「見ちゃった」
放課後を迎えて下校しようと教室を出た瞬間、スキップでもするかのような楽観的な声が、不機嫌な俺の邪魔をした。
俺のペースを乱すのは、彼女だけにしか許していないのに……俺の神経を逆なでしてくるやつはどこのどいつ?
重たい視線をなんとか上げると、俺が今一番嫌いな“あいつ”が人の良さそうな、それでいて胡散臭い笑みを浮かべていた。
「ひまりちゃんとお昼寝とか、ずるくない? 心底羨まし過ぎるんだけど、どんな方法を使ったの? それとも、ひまりちゃんは純情そうなふりをして、実は誰にでも―――」
「―――喋れなくしてほしいなら、早くそう言えばいい」
ダンッと、奴の身体を壁に押し付けたらすぐに静かになった。
整った顔が痛みに歪んでいるのは、見ているだけで気分がいいな。
初めからこうしておけばよかった。
それにしても、つい今日の昼前までは“浅川さん”だったのに、もう“ひまりちゃん”って呼んでるのか。ムカつく。
やっぱりこいつは軽くて危なそうだから、彼女には注意喚起をしておかないと。