気だるげ男子の無自覚な独占欲

気だるげな湯本くん




 目が覚めて一番に聞こえてきたのは、グラウンドを走っているらしい野球部の熱気に溢れたごつい声たちだった。


 つまるところ、私は放課後までぐっすりだったみたいで……。


 そのことに気づいたとき、睡眠を取ったことで血色を取り戻したはずの顔色が早々に真っ青へと変わってしまった。


 ベッドから飛び起き、保健室から飛び出す勢いだった私を引き留めてくれたのは、女神のような心を持った保健室の先生で。


『ここに来たとき顔色が酷かったから、担任の先生には保健室にいるって伝えておいたわよ』


 その言葉を聞いてなかったら体育と数学の先生それぞれに土下座をしに行っていたところだった。


 私は真面目さだけが取り柄なんだからしっかりしないといけないのに……。


 申し訳なさ過ぎて保健室の先生に渡す献上品をスクールバッグに忍ばせて登校したのが今朝のこと。


 コーヒーよりも紅茶派なのはリサーチ済みだから、お高めティーバッグの詰め合わせにしてみた。


 素敵な恩人様のお口に合うといいな。



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