気だるげ男子の無自覚な独占欲
彼女を取られたくない。
隠したはずの浅ましい願望が、佐原にはバレバレだった。
それが無性に恥ずかしい。
「……ごめん」
俺をこてんぱんに打ちのめした佐原は、機嫌が良さそうに口の端だけをぐっと上げる。
「はぁー! 言いたいことを言ってスッキリした!」
言われっぱなしだった俺も、佐原のおかげで清々しい気持ちになっている。
恋の参考書に書いてあったものだけが全てじゃない。
不明瞭な感情は、恋とは呼べないと思ってた。
『そもそも恋って曖昧なものでしょ?』
心臓がドキドキするのだけが恋なんだって……定義は一つしかないんだって思ってた。
『“好き”は人それぞれだよ。正解なんてない』
そして、佐原も言っていた欲は、俺が彼女に会ったときからずっと抱いていたもので。
『独り占めしたい』
こんなの、彼女に恋してる以外のなにものでもない。