気だるげ男子の無自覚な独占欲
じーっと思う存分に熱い視線を送る。すると“見てて”と湯本くんの口が動いた。
言われなくてもそのつもりだったけど……改まって、どうしたんだろう?
ひとまず、こくりと頷いたとき。試合開始のブザー音が大きく響いた。
先にボールを取ったのは相手チーム。
クラスメイトたちの落胆の声が漏れる。だけど、すぐにそれは変わって……。
「え、今ボール奪ったの誰?」
「湯本くんじゃない? あのいつも寝てる……」
「うぉー! ドリブルはやくね!?」
男子も含めて大きくなるギャラリーの声。
何回か瞬きする間に、こちらのチームに2点が入った。
普段ののんびりした姿からは想像できない俊敏な動き。
クラスメイトはもちろん、湯本くんを知らない人たちも呆気に取られている。
先ほどの佐原くんに負けないくらいの凛々しさを帯びた湯本くん。
そのかっこよさに、きゅんでもドキドキでもなく、ドキッと心臓が新たな音を立てた。