気だるげ男子の無自覚な独占欲



 “見る”なんてものじゃない。


 湯本くんだけを目で追って、焼き付けて。


 ボールが跳ねる音や、体育館シューズが床と擦れる音。湯本くんが奏でる音全てを、私の中に取り込む。


 魅了されて仕方ない。どんどん好きが募って仕方ない。


 ……私はもう、失恋してるっていうのに。


「うわ、でた! マーク固いって~!」

「しかもついてるやつ、バスケ部じゃん?」

「せっかく同点なのに……」


 体格のいい2人が壁になって、湯本くんが見えなくなる。


 なるほど……さっき女の子たちが感じてたのはこの歯がゆさだったんだ。


 確かに文句を言いたくなるかもしれない。勝負事だから仕方ないんだけど。


 こっちの焦る気持ちとは裏腹に、湯本くんは特に大きく動くこともなく、ぴたりと止まって。


 かと思えば、弾丸が飛び出すみたいにマークを振り切り、パスを受けて流れるようにシュートを決めた。


 Aチームの試合を見て、マークされたときの動きをチームの中で決めておいたのかもしれない。


 俊敏どころか、事前に策を練っておいてる……?


 そんなの、かっこよすぎてずるいよ……。



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