気だるげ男子の無自覚な独占欲



 こんなにも簡単に大きく音を鳴らす心臓を押さえながら、緊張でどもらないように口を開く。


「もちろん。すごくかっこよかったね」


 しばらく会えなかった気まずさは僅かにもなく、満面の笑みが浮かんだ。


 すると、湯本くんは口元を緩めて、


「……よかった」


 安心したような微笑みを向けた。


 い、今の表情、なに……?


 どうしてそんな、気を緩めたみたいな顔をするの……そろそろ心臓が止まっちゃうよ。


 なんて言えないから、とりあえず深呼吸をする。


 深呼吸なんかじゃ、今更ドキドキは治まらないんだけど……。


「俺、頑張るから」

「……?」

「だから、俺だけを見てて」


「わ、わかった……」


 湯本くんの宣言とお願いに戸惑う私。


 『よし』と気合いのこもった頷きをした湯本くんは、チームメイトのところへ向かっていった。



 気だるげな湯本くんは一体どこに行ったの……?



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