気だるげ男子の無自覚な独占欲
気だるげ男子の独占欲
私が出たドッジボールも、湯本くんが出たバスケットボールも、全試合が終了してやってきた保健室。
久しぶりの保健室の独特の香りが懐かしい。
先生はいざというときのためにグラウンドで待機中とのこと。
「疲れた……」
「お疲れ様。はい、これどうぞ」
「ありがとう」
このままベッドに倒れ込みそうな湯本くんをかろうじて支え、道中で買ったスポーツドリンクを渡した。
9月末なのに、晴れの日はすごく暑い。
ペットボトルの中身はすぐに空になった。
それと引き換えに今度は汗拭きシートを渡す。
ひんやりとして気持ちいいやつ。私のお気に入り。
湯本くんがシートを引き出すと、ミントの香りが保健室に広がった。
ありきたりな匂いなのに、湯本くんと一緒なのが嬉しいだなんて変だよね。
「って、のんびりするために来たんじゃないよ。湯本くん、そこに座ってから手首を見せて」
「……バレてた?」
「見ててって言ったのは湯本くんだからね」
あのときの微笑みは夢だったかのように表情が動かない湯本くん。
だけど、声はバツが悪そうに小さかった。