気だるげ男子の無自覚な独占欲



 失恋したと思っていたのに、急にこんなことってあるの……?


 湯本くんの微笑みと同じで、これは私の都合のいい夢なんじゃないかって疑ってしまう……。


 手に伝わる熱は、私のものじゃないってはっきりわかるくらいに高いものだけど。


「好きだからキスした。かわいいなって思ったら、なんか止まらなくて。ほんとは初めて会ったときから好きだったのに、全然気づいてなかった。ごめん」


 そう言って謝る湯本くんの手は、ちょっとだけ震えてる。


 私に嫌われるかもしれないって、怖がっているの……?


 私が湯本くんを嫌うなんて、あるはずないのに。


「湯本くん。私が湯本くんといると緊張するのは、なんでだと思う?」

「俺のことが怖いから?」

「ぜんぜん違うよ」

「ひまりは優しいから、仕方なく巻き込まれてくれてるんだと思ってた」


 口数が少ない心の内で、湯本くんがそんな的外れなことを思っていたとは……本音を曝け出すって大事なんだね……。


 びっくりしすぎて空気を飲んじゃった。


 気を取り直して、一度深呼吸。


 それから、まだ震えたままの手にぎゅぅぅぅっと力を込める。



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