気だるげ男子の無自覚な独占欲
「うん……? お前はなにを開き直ってるんだ……?」
「おやすみ」
「おい! 寝るな!」
生徒側の事情を知らない先生は、湯本くんの言葉に困惑していたけど。
……もしかして、かばってくれたの?
先生の怒りを受け流している湯本くんにちらりと目をやると、またまた視線が合わさって。
そこに、女子たちへ向けた鋭さはもうなくて。
だからと言って特に微笑んでいるわけでもない、気だるげな元の湯本くん。
だけど、それが。その普段の様子が、私に『大丈夫』って言ってくれているみたいで。
『気にしなくていい』って味方になってくれているみたいで、じわりと胸の中心が温かくなった。
まともに話したこともない、少しの間布団を分け合っただけの仲。
そんな私に優しい湯本くん。
『ありがとう』
私は口をぱくぱくと動かす。嬉しさが込み上げてきて、自然と笑顔が生まれた。
湯本くんは眠たそうな瞼をほんの少し持ち上げた直後になぜか顔を伏せてしまったけれど。
また今度、ちゃんとお礼を言わなきゃ。
なんて口実を作りながら、湯本くんと話すことを心待ちにする自分がいた。