地味系女子のワケあり事情。
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「あのさ、ねぇ心優、その気持ち悪い変装やめたら?」
「は、波留……。」
波留は親友。
わたし、可愛い友達が居て幸せだな〜。
「…わかるよ?
確かに心優の本当の姿を晒したりしたらクラスメイト全員、とは言わず…
世界中の人が失神する思う。でも、もう変装はやめよう?」
「え……。し、しょうがないじゃん…。事務所の命令なんだもん。」
私ってやっぱり、波留から見ても人に失神されるくらいブサイクなんだな…。
「事務所のことは知ってる。だけどもっと可愛く変装にすればいいのに、まじでダサいよ?」
「う…。そんな率直に言わなくても…。」
「本当のことじゃん。それにそのせいで可愛い心優がのけ者にされてるんだよ?私が黙って見てられると思う?」
「た、確かに…。私は可愛くないけど…。」
「…はぁ?あんたが可愛くないんだったら私はどうなんのよ…。」
「は、波留は可愛いに決まってるじゃん。
それはもう天使くらい!!天に召されちゃう…くらい!」
波留は可愛い!
「はぁぁ…あんた馬鹿なの?」
「え…?」
波留は私が女優で、そして変装していることを知っている。
小学校の同級生で、私がいじめられてもずっと守ってくれた優しくて心強い1番の親友。
本当に大好き。
ずーっと一緒にいたいなぁ。
そして波留は、もう1つの秘密も知っている。
それは……。
婚約者がいるということ。
んっと…いわゆる、政略結婚。
なんと、相手は見たことも聞いたこともない。
でもやっぱり、自由に恋愛して自由に結婚したいって思っちゃう。
わがままなのかな?
…私と恋愛したい人なんて、いないかもしれないけど。
その人はお父さんが経営している会社のパートナーである会社の子で、結構…重要な人の息子さんらしい。
どんな人なんだろう。
そういえば…あんまり深く考えたことなかったかも。
いまさらだけど、気になる…。
はぁ…私…好きな人が、いるのに…。
悠人は、私に好きとか言われても…多分嬉しくないよね。
あぁ…なんか虚しい…。
泣きたいよ…。
バシッ
…!?
「何ぼーっとしてんのよ心優。ほら、早く教室に帰るよ!」
「…ほぇ…ん、あ…うん!…今行く…!」
もう授業終わってたんだ…気がつかなかった。
「あ〜、遅い!早くしてよ。」
「う、うん!」
この後、予想外の人がこの学園に来ることなんて…少しも知らなかった。
私は呑気に髪の毛の先をクルクル回しながら
波留に『目を覚ませ』ともらった激辛とうがらし&激辛タバスコわさびミックス味の飴を食べていた。
か、辛っ。口から火が出る…!
というかなにこの味…。まずいっ!
吐き出したいけど、流石に本人の目の前では無理かな…。
うわぁ…私、甘党なのに……。