恋と、餃子と、年下男子
ちゃんとした服に着替えようかと思ったけど、よく考えたら彼にはもう、とんでもない格好を見られている。今さら取り繕っても無駄だ。結局、ゆるっとしたスウェット生地のワンピースにした。
 
 食卓には、カレーの他にいろんな種類の野菜が入ったサラダ、デザートにフルーツのコンポートまで並んでいる。
「すごい……。これ、全部あなたが作ったの?」
 彼の対面に座りながら、質問する。
「うん、まあね。でも材料は全部、萌子さんの冷蔵庫に入ってたやつだよ?」
「え、そうなの? こんないろいろ買ってたっけ……」
 料理はあまり得意じゃないくせに、材料が何もないとなると手も足も出ない。残りものでパパッと、みたいな芸当ができない私は、知らないうちにいろいろ買い込む癖がある。それもこれも、彼氏——貴之に、振る舞うためだった。もう必要の無いものばかりだ。
「それじゃ、いただきまーす」
「いただきます」
 カレーを一口含むと、食べ慣れたリアルカレーの味以外に何か別の味がした。それがアクセントになって、カレーをより美味しくしている。
「わあ……美味しい。隠し味に何か入れた?」
「あ、わかる? 冷蔵庫にあったハチミツレモンをちょこっとね。酸味と甘味が加わって、いい感じでしょ?」
「うん、すごく美味しい」
「ふふ、良かった」
 彼はニコニコしながら、私が食べるのを楽しそうに眺めている。
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