恋と、餃子と、年下男子
 ホットプレートで作る冷凍餃子の試作がようやく完成し、商品開発部長からもOKがもらえた。企画部のパッケージ担当と商品パッケージの打ち合わせをし、子供になるべく響くようなポップで可愛らしいイメージに仕上げてもらった。いよいよ明日から、うちの主力商品を置いてもらっているスーパーの冷凍食品コーナーに並ぶことになる。
 

「広報課でも力入れることになったから。SNSを駆使して」

 昼休み。久しぶりに同期の梨紗とランチした。ここのところ、忙しすぎてのんびりお昼も行けていなかった。ヤッシーとは何度か定食屋や立ち食い蕎麦に行ったけど、それも時間を惜しんでいた。

「そうなんだ……。ありがたいわホント」
「渡辺課長直々に、広報課(うち)にいらしたのよ。このプロジェクトはきっと上手くいくから、どうか後押ししてほしい、って」
「ナベさんが……」

 ナベさん、仏様のような顔だと思ってはいたけど、リアル仏だったとは。

「ナベさん? あんた課長のことナベさんて呼んでるの?」
 梨紗がギョッとした顔で私を見る。
「え? うん。そう呼んでくれって。私も『モエモエさん』て呼ばれてるし」
「……カルチャーショック」
 いつかの私と同じ感想に、笑いが込み上げる。
「良かったわね、萌子。良いところに異動して」
「う……ん、まあ、そうね」
 それは間違いない。だけどやっぱり、異動の理由が理由なだけに、釈然としないものはある。
「……気にしてるの? パワハラのこと」
「そりゃそうよ……。積み上げてきた七年が、一瞬にして崩れたんだから」
 新しい部署で上手くやれたとしても、この先どんな成果を出せたとしても。「パワハラをした」というレッテルが私から消えることはない。会社がその見解を覆さない限り。
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