恋と、餃子と、年下男子
「あの、本多さん……。事実無根であれば、私が総務に掛け合います。今回の冷凍餃子プロジェクトの成功は、あなたの力が大きいんですから」
モエモエさん、といつものように呼んでくれないことに、少なからず疑われているんだと察した。
圭人はもう、いない。だけど、圭人がいた日々は嘘じゃない。酔っ払った私が拾って、家に置いたのは事実だ。仔犬のように私を見つめ、癒し、笑顔をくれた。美味しいご飯を作って、毎日私の帰りを待っていてくれた。無防備で、可愛くて、愛おしくて。私を、私なんかのことを、好きだと言ってくれた。全部、嘘じゃない。
「……本当です」
「本多さん……」
「全て、私個人の責任です。渡辺課長、久保さん、薬師寺さんには何の非も無いことです。皆さんは表彰されるべきです。それだけの仕事をしたんですから」
「しかし……」
「課長。私、会社を辞めます。それなら、チームを表彰してもらえますよね?」
「いやっ、でもモエモエさんが辞めるなんて……」
「いえ、私は既に一度ペナルティをもらっているので。二度目は無いと思っていましたし、短い間でしたが皆さんと働けて、とても楽しかったです」
ナベさんに頭を下げると、私はヤッシーと久保君が心配そうな顔で何か言ってくるのを無視して、足早にその場を去った。家に帰って退職願を書いて、あらためて出直さなきゃ。ああ、そうだ。梨紗にだけは、連絡しておこう。
——すぐに泣く女は嫌いなのに。
会社から一歩出た途端、私の目から大粒の涙が溢れた。悔しいのか、寂しいのか、感情がよくわからない。
『おかえり萌子さん』
そう言って、圭人が家で待っていてくれたらいいのに。そうしたら少しは、軽い足取りで帰れるのに。
そんなことを思いながら、私は逃げるように家への道を急いだ。
モエモエさん、といつものように呼んでくれないことに、少なからず疑われているんだと察した。
圭人はもう、いない。だけど、圭人がいた日々は嘘じゃない。酔っ払った私が拾って、家に置いたのは事実だ。仔犬のように私を見つめ、癒し、笑顔をくれた。美味しいご飯を作って、毎日私の帰りを待っていてくれた。無防備で、可愛くて、愛おしくて。私を、私なんかのことを、好きだと言ってくれた。全部、嘘じゃない。
「……本当です」
「本多さん……」
「全て、私個人の責任です。渡辺課長、久保さん、薬師寺さんには何の非も無いことです。皆さんは表彰されるべきです。それだけの仕事をしたんですから」
「しかし……」
「課長。私、会社を辞めます。それなら、チームを表彰してもらえますよね?」
「いやっ、でもモエモエさんが辞めるなんて……」
「いえ、私は既に一度ペナルティをもらっているので。二度目は無いと思っていましたし、短い間でしたが皆さんと働けて、とても楽しかったです」
ナベさんに頭を下げると、私はヤッシーと久保君が心配そうな顔で何か言ってくるのを無視して、足早にその場を去った。家に帰って退職願を書いて、あらためて出直さなきゃ。ああ、そうだ。梨紗にだけは、連絡しておこう。
——すぐに泣く女は嫌いなのに。
会社から一歩出た途端、私の目から大粒の涙が溢れた。悔しいのか、寂しいのか、感情がよくわからない。
『おかえり萌子さん』
そう言って、圭人が家で待っていてくれたらいいのに。そうしたら少しは、軽い足取りで帰れるのに。
そんなことを思いながら、私は逃げるように家への道を急いだ。