鍵の皇子と血色の撫子
「あの部屋にあったのは透明なシャンパンだけだったのに、あいつのグラスには真実の姿をさらけ出す秘薬が、お前のグラスには初めてでも負担がかからないよう媚薬が混入されていたんだよ。壱畝の手でな」
「媚薬……だから、わたし、ふわふわしているの?」
「ああ。可愛いな。我慢できなくなる」
 
 金髪青目の聖岳ではなく、黒髪赤目のガクの手で、撫子は着ていた服を脱がされ、一糸まとわぬ姿に変わる。

「で、でも……これは、不貞になりませんか」
「あいつのことなら心配するな。壱畝に秘薬を飲まされた時点でこうなることはわかっていたはずだ。俺からすればどっちでもよかったけどな」
「どっちでも?」
「だってお前はふたりの俺に愛される鍵穴になるんだから。いまの俺は鍵のちからを解放したガクだが、ふだんの聖岳がお前の婚約者で鍵穴のスペアの鍵であることも事実じゃねーか」
「アッ」
「そんなことより、俺の手で気持ちよくなれよ、撫子」

 カリっと胸元の突起を齧られ、淡い桜色の乳首が紅色へ染まる。
 誰にもふれられたことのなかった場所を、丹念に弄られて、撫子の声に艶が混じる。
 媚薬の効果も相まって、身体中が熱くなる。
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