鍵の皇子と血色の撫子
「ええ……」

 昨晩の痴態を思いだし、頬を赤らめれば、困ったように聖岳が口をひらく。

「ほんとうなら、結婚してからやさしくしてあげたかったのですが、ガクは我慢できないから」
「いいえ。わたしがガクさまを薬で呼び出してしまったようなものですから……それに、気持ちよかったですし」
「そう?」

 青い瞳がぎらりと光る。
 まるでもうひとりの自分に嫉妬しているようだなと、撫子は苦笑する。

「ガクさまは聖岳さまもわたしの鍵穴にぶちこみたい、っておっしゃってましたよ?」
「ぶっ」
「ほんとうのところ、どうなんでしょうか?」
「それをいま、僕にきく?」

 貴女はまだ事後の状態――はだかのままなのですよ、と聖岳に指摘され、撫子がハッとする。
 慌ててシーツを身体に巻き付けようとしたが、その腕をとられ、身体ごと寝台のうえへ沈められてしまう。

「僕だって貴女の鍵穴に挿れたいさ。でも、姫の身体がもたないだろう?」

 一晩中もうひとりの自分――鍵の皇子として暗躍する黒髪赤目のガク――と睦みあっていたのは聖岳の身体が記憶している。
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