鍵の皇子と血色の撫子
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その後、金色の鍵皇子と呼ばれた第三皇子聖岳は、かつて血色の撫子姫と呼ばれた神官一族の白鷺宮家の令嬢を娶り、帝位を継ぐことになった無能な第二皇子の補佐として暗躍するようになった。
もし彼が帝位を望んだら容易く手に入っただろうとひとびとは口にしたが、彼は帝の座よりもなによりも、妻を誰よりもなによりも大切に、第一に想っていたという。
血色の撫子と畏れられた妻を溺愛する鍵の皇子の姿は一歩間違えれば国を滅ぼしていたかもしれない、だからこれで良いのだと、のちに父皇は語っている。
――fin.