心の温度

「お兄ちゃんは隣県の割と大きな設計事務所に勤めていて、お嫁さんも同じ設計士だったんです。
2人が結婚して、共稼ぎだったけどお嫁さんが妊娠して、出産してお兄ちゃんも七海とお嫁さんを大事にしてました。

ある日お兄ちゃんがお昼に自宅へ戻ると七海が大泣きしててお嫁さんは仕事部屋でヘッドホンをして設計図制作をしていたそうです。お兄ちゃんが七海が泣いてると叱ったら"こんな子育てしてたら自分のキャリアが下がる"と言って暴れて、その日私とうちのお母さん、お嫁さんのお母さんがマンションに呼ばれました…

お嫁さんは鬼の形相で暴れていて、七海は大泣きしてたので私がミルクを飲ませてからオムツ替えをしたら…いつオムツを替えたんだろうってくらい酷い状態のうえ、七海のお尻は真っ赤に皮膚がただれてました。

それをお嫁さんが落ち着いてから両家の母親たちとお兄ちゃんに見せたら、
お嫁さんのお母さんはお嫁さんを連れて翌日病院へ連れて行ったそうです。

診断結果は…育児ノイローゼで育児放棄。

お兄ちゃんが声を出して泣きながら七海を抱きしめていた姿を今でも思い出します……

そしてすぐにお嫁さん側から離婚して欲しいと言われ、七海を私達家族でフォローしながら育てていました。

七海が1歳になった頃、お兄ちゃんは親友で井上不動産の副社長の大輔さんから、もし辛いなら井上不動産に来ないかと誘われてこっちに来る事になったんですが… お兄ちゃん1人で子育てしながらの仕事は大変だと思い、家族で相談し私がこちらの病院に転勤してお兄ちゃん親子をフォローする事になったのが3年前なんです…


こんな重たいお兄ちゃんの離婚話しをして申し訳ないんですが… 浮ついた理由で離婚した訳では無い事を彩音さんには知っておいて欲しくて…」
< 111 / 330 >

この作品をシェア

pagetop