心の温度
リビングに入り、お茶を持ってきたお義母さんも一緒に啓太を皆んなで抱っこする。

全員でにこやかに話しをしていたが、
お義母さんの一言が気になった
「これからは中々会えないわね〜啓ちゃん」

「時々は彩音も連れて遊びに来るよ」

「でも旅館のお客様に迷惑をかけられないから」

彩音は私と啓太が迷惑?なのかなぁ…
まさか…

「彩音さんもお仕事はいつ頃から復帰するの?」

「ハイ。これから会社とも相談してからですが
春からと考えています。」

「そう。確か彩音さんの会社は社内に保育園ルームがあるのよね? 素晴らしい会社よね!」

「ほう。彩音さんの会社は大企業なんだなぁ」

「ああ、彩音は大企業の経理課なんだよ!」

「大企業さんだから仕事は細分化されてるのかな?」

「まぁ、そうですねぇ」

「お父さん、そんなの当たり前よ。
うちみないな
経理とは全然違うんだから」

「そうだよなぁ〜ハハ」

「お父さん、母さん
彩音は啓太を産んだばかりなんだから
旅館でコキ使わないでくれよな。」

「まぁ、そんな事しないわ」

「いやぁしかし赤ん坊は可愛いなぁ。
なぁ母さん」

「ほんとにネ」

「あの、お義父さん、お義母さん…
彩音と啓太くんですが、この際こちらで
同居してはどうかと思ったのですが…」

「え? 純一、お二人にお話ししてないの?」

「ああ…う ん…」

「もう! 申し訳ございませんお義母さん。
うちはこの通り旅館業で毎日バタバタしておりまして彩音さんと啓太ちゃんがこちらで同居しても部屋もありませんし、
純一の妹も旅館の修行もしておりますので
なかなか私どもも余裕がないんですよ。
彩音さんと啓太ちゃんには申し訳ないんですがマンションでいてもらえると助かるんです。

純一は今まで通り水曜日と木曜日は
休日でマンションに帰しますからご理解頂けませんでしょうか…」

「あ、こちらこそこちらの事情も知らず
申し訳ございません。
ただ…夫婦なら一緒に子供を育てた方が良いのではと考えてましたので」

「いいえ、いいえ、こちらこそサラリーマン家庭とは事情が違うのでね。すみませんね。
彩音さんもゴメンなさいね〜」

「はい…」

「本当にお義母さん、彩音さん
申し訳ないが事情を汲んで下さい。」と
お義父さんが頭を下げた。

純一もお義父さんと一緒に頭を下げた。
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